CESC 60周年記念誌「Jump to the furure!」
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9NPO法人カウンセリング教育サポートセンター理 事 古郷 俊朗 (調停委員) 60歳の定年後、調停およびCESCの運営とカウンセリングに関わりながら、今年70歳を迎えました。改めてこれからの人生をどう生きていくかを、「ゆっくり」考えて始めています。 70歳を超えると、「ゆっくり」という感覚に自然となじんできます。定年までは忙し過ぎてサラリーマンとして充実はしていましたが「何かに追い立てられて」という感覚がつきまとっていた気がします。なので定年後しばらくは何にもしない(できない)時間がイヤで仕方なかったし、宙ぶらりんの不安も感じていました。 結局、「俺は何をしたいんだ?」と行先のない、やることがない日はイライラします。ユーチューブを見ていると知的好奇心を満足させてくれる番組には事欠きません。よくこんな高レベルなものを無料で提供してくれるんだなと驚くほどです。しかし、それもしばらく見ていると飽きてくるというか疲れてきます。それはおそらく自分とは関係ない上っ面の世界だからなんでしょう。 今、私が大事だなと思うことは自分に降りかかっている出来事、人間関係、生活をどうするかということが最大の関心事です。それに対しては、自分自身で真剣に考え行動する必要があります。 私はこれまで随分CESCでのカウンセリングの学びに助けられてきた実感があります。それはサラリーマン時代の仕事や定年後の調停にも大いに役立ってきました。端的に言うと「人の話を聴くこと(誰もが自分の物語を誰かに聴いて欲しいのです)」と「(他人の受売りでない)自分自身で考えること」が基本中の基本ということです。そして、また、体得できたことは、「頭のレベルでの理解では何も変わらない。腑に落ちて(ドーンと体の深いところまで届いて)初めて変われる」「他人は変えられない、自分が変わるしかない」ということにつきる気がします。 それにはリアルで対面で人と触れ合うことがとても重要です。この3年間、コロナのために個人が分断され対面で会う機会が極端に少なくなったことは、とても残念なことに私には思われます。東畑開人著の『心はどこへ消えた?』に記された次の言葉が心に残ります。〈心が一つ存在するために、心は必ず二ついる〉 CESCには、そうした「人の話を聴く」「腑に落ちる」ような刺激に満ちている講座が沢山ありますし、また、そういうものを提供していくことが大切なことだと思います。具体的には、座学の理論だけでない実践的なグループワークやケーススタディ等の充実が、これからの社会にはより求められていくのだと確信しています。CESC創立60周年を迎えて

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