27跡見学園女子大学教授宮崎 圭子 CESC創立60周年、まことにおめでとうございます。 NPO法人カウンセリング教育サポートセンター(CESC)の前身である横山カウンセリング研究会が創設されたのは1962年とのことです。1960年代は、日本が高度経済成長の最盛期でした。60年代半ばには、カラーテレビ・クーラー・自動車が「新 三種の神器」と呼ばれ、庶民の豊かさへのあこがれが高まっていきました。その一方で、社会の中で、高度経済成長のきしみが徐々に表れていきます。国民の重要な最小集団単位である家族も、核家族化が進んでいきます。第1次産業従事者人口の減少、自営業者の減少とともに、地域社会が弱体化していきます。 それに連動するように、日本人の心の中にもきしみが生まれていきます。「悩みや不安を感じている」と回答している割合は 1958年では3割程度でしたが、1960年代に入りますと55%に増加していきます。1954年にNTT(当時は日本電信電話公社)がカウンセラー制度を試行的に導入します。ですが、1963年の調査報告では、1,190事業所のなかでカウンセラーを置いている企業はわずか45社でした。社会のニーズに必ずしも適切に対応できずにいた当時の現状が浮かびます。 こうして振り返りますと、1962年の横山カウンセリング研究会の創設、その後身となる東京カウンセリング・スクール(TCS)のスタートが、如何に斬新でチャレンジフルな事業であったかがご理解頂けると思います。 筆者には強いインパクトを受けた想い出があります。筆者の指導教授の故・松原達哉先生の代講で、TCSに伺ったときのことです。研修会終了後、オフィスの机の上に置かれていたパンフレット(だったかと……)に、TCSが開設していたコース修了生のお名前の一覧表がありました。驚いたことに、大活躍しておられる錚々たる先生方のお名前がズラッーと並んでいました。傍におられた笈田先生(現・代表理事)に、「流石、歴史のあるTCSですね」と感嘆を込めてお伝えしました。笈田先生は「昔は、カウンセリングを学ぶところが殆どなかったのよ。カウンセリングの科目を置いている大学もなかったのよ」と答えられました。 CESCは、常に、時代の1歩先を歩んでこられました。しかし、その挑戦は、アグレッシブな挑戦ではなく、「自分に正直に、率直に、素直に活動していきます」というCESCの理念を体現した挑戦です。 60周年の節目をお迎えになられて、事業再編成と新しい活動内容を定められたようです。上述のCESCの理念に沿った 再編成です。「暮らしと仕事に役立つカウンセリング理論」、「からだ・こころ」と「あたま」をつなぐこと、“わかる”から“できる”を目指す事業が展開されるとのことです。CESCらしい新しい挑戦が始まります。今後が、ますます楽しみです。CESC創立60周年を迎えて
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