19九州大学名誉教授 野島 一彦 1962年の横山カウンセリング研究会を起点として2000年にNPO法人CESCとなり活動を続けてこられて、このたび60周年を迎えられたとのこと、誠におめでとうございます。また、人間で言えば還暦を迎えたことになり、諸状況の変化を踏まえて、2023年からは新たな展開をされるということで、大いに期待します。 貴会は、臨床心理学の三大流派(精神分析、行動主義、ヒューマニスティック心理学)のなかで第三勢力に位置づけられるカール・ロジャーズの立場(非指示的カウンセリング、来談者中心療法、パーソンセンタード・アプローチ)を中核として、ジェンドリンの考えも含みながらパーソンセンタード・カウンセリング(PCC)を主軸とした活動を目指しておられます。 ある調査によれば、わが国の心理臨床家の7割は自分のオリエンテーションを来談者中心療法であると答えていますが、その深い本質は必ずしも理解されていないように思います。表面的な皮相な理解に留まっているのではと危惧します。 私が知る限りでは、有能な精神分析家、行動療法家は、その療法のベースには来談者中心療法で重視されている態度三条件(自己一致、受容、共感的理解)を身につけているようです。つまり援助的人間関係で欠かせない普遍的な条件をロジャーズは概念化してくれているように思います。 このような状況のなかで、CESCがロジャーズの系譜のカウンセリングのエッセンスを学べる研修事業、そのようなエッセンスを生かした相談事業を中心に活動をしていかれることを、ロジャーズ好きの私はとても嬉しく、かつ頼もしく思います。 2021年に、ロジャーズやジェンドリン等の考えや実践に関心を持つ人たちの全国組織である日本パーソンセンタード・アプローチ協会(https://pcea-japan.jimdofree.com 関連団体は10団体)が設立され、会員間の情報交換・交流、研究会の開催等が行われており、パーソンセンタードの流れが次第に活発化しているなかで、関連団体の一つであるCESCはそれに貢献すると思いますし、そのような流れを主導してほしいと願います。新たなCESCへの期待
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