17文教大学教授岡村 達也 パーソンセンタード/体験過程療法(PCE)の効果に関する最新の研究を見てみましょう(Elliott et al., 2021)。「メタ分析」という解析技法が使われます。複数の個別研究を統合する技法です。結果は「効果量」で示されます。効果量は、0.20なら「小」、0.50なら「中」、0.80なら「大」と評価されます。 「治療前後の比較」では、効果量は0.86で、「大きな効果がある」と言えます。「治療群と対照群との比較(RCTの場合)」では0.98で、やはり「大きな効果がある」と言えます。RCTは、研究参加者を治療群と対照群に無作為に割りつけて比較する最も厳密な研究法です。 他の療法と比べてどうでしょう? 効果量は-0.07で、「-」は劣ることを意味しますが、この程度では「同等」と評価されます。特に認知行動療法(CBT)と比較してみましょう。効果量は-0.26で、「やや劣ります」が、「研究者の身びいき」を統制すると0.00になり、やはり「同等」です。特にパーソンセンタード・セラピー(PCT)とCBTを比較してみましょう。効果量は-0.20で、やはり「やや劣ります」が、同じく「研究者の身びいき」を統制すると0.01になり、やはり「同等」です。 「自信を持ってPCEを行おう!」と言うゆえんです。 PCEと言ってもいろいろあります。効果に違いはあるでしょうか? 「治療前後の比較」では、エモーションフォーカスト・セラピー(EFT)の効果量は1.31、PCTの効果量は0.98で、いずれも「大きな効果がある」と言えます。特にEFTの効果量は大きく、これがPCE全体の効果量を上げている面があります。一方、いわゆる「支持的/非指示的」療法の効果量は0.73で、EFTやPCTに比べて小さく、これがPCE全体の効果量を下げている面があります。 「自信を持って、ちゃんとしたPCEを行おう!」と言った方がいいかもしれません。 CESCがこの方面に果たしてきた役割を思います。そして、その役割にさらに期待するゆえんです。付記:研究結果の結論だけを見て、「なにをいまさら!」と仰らないでください。調べて(研究して)みなければわからないのです。教え込み(教義)や思い込み(信念)のみに拠るのでは、「心理療法の科学的研究」の先駆者ロジャーズに背くことになります。私たちにもできる「科学的研究」は、事例の丁寧な検討に違いありません。Elliot,R.,Watson,J.,Timulak,L.,&Sharbanee,J.(2021).Research on humanistic-experiential psychotherapies:Updated review.In M.Barkham, W.Lutz,&L.G.Castonguay(Eds.),Bergin and Garfield's handbook of psychotherapy and behavior change (7th ed.) (pp.421-467).Wiley.自信を持ってパーソンセンタード/体験過程療法を行おう!
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